SDGsとは、“Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標”のこと。
最終的な目標こそ地球環境への負荷軽減や人道的格差の改善などの非常に大きなものですが、そのための1ステップは日常の中でのちょっとした工夫や意識の転換といった身近なところから始まります。
一歩の幅は大きくないかもしれませんが、多くの人が出来る範囲で少しずつ積み重ねることが、例えば食材となる動植物の生育環境を守ったり、水源の枯渇スピードを遅らせたりといった食の未来を守る成果につながるかもしれません。

『循環型モノづくり』

陶磁器や釉薬に使われる原材料は土や岩などの自然由来の物質を多く含みます。それらは、その土地の土壌環境などが長い時間を掛けて作り出してきた結果の産物。一朝一夕に増える性質のものではなく、基本的に消費の一途を辿ってきたと言っても過言ではありません。
産地によっては枯渇の危機に瀕していることが分かっていて、このままでは国産原料を使った陶磁器産業は衰退してしまう恐れがあります。
一例として陶磁器を挙げましたが、こういった現象は規模の大小はあれど、他の産業でも見られるようになりました。動物が絶滅するように、技術や素材もまた絶えることがあるのです。

その状況に対し、大橋洋食器では少しでもこれを緩和するための『循環型モノづくり』を実践しています。
その第一弾が『Re:CAFE(リ:カフェ)』。釉薬や塗料の成分の一部を、廃棄されるコーヒーの出涸らし(コーヒーグラウンズ)に代替した商品。

コーヒーを飲む人口は年々増加していますが、一方で抽出後の出涸らしは水分を含むため、燃焼するにもエネルギーが掛かる上、土中の窒素を吸着する性質を持っているため、植物の成長を阻害する場合があり、安易に埋め立てることもできず、その廃棄方法は課題とされてきました。近年ではコンクリートの強度向上を目的に助剤として混ぜられたり、バイオエタノールとしてアップサイクル技術も生まれていますが、これらのほとんどは海外での事例で、身近な範囲でのアップサイクルはあまり進んでいないのが実態です。

▲コーヒーの出涸らしを使用したマグカップを開発。

『Re:CAFE (リ:カフェ)』

アップサイクルにも色々な考え方がありますが、『Re:CAFE』で目指したものは『コーヒーを飲む文化に寄り添い、その中で生じる出涸らしを、無理なくモノづくりに活かしていくという循環型システム』。言うなれば、“食文化の中に無理なく組み込めるアップサイクル”です。

そのため、元となる出涸らしは同じ新潟県内のコーヒーショップで日常的に出たもののみを使用。これを最終的に釉薬や塗料に加工し、またモノとして還元していく、というサイクルで商品を作っています。

この商品を生み出すことで、すぐさま環境への負荷を減らしたり、資源の枯渇を防ぐような爆発的な効果はありませんが、大切なのは身近な問題に気付くこと。何気なく出されたコーヒーのカップが、いつか自分が飲んだかもしれない一杯のコーヒーから出来ていると知ったら、“モノの絶滅”やコーヒーの出酒らしの環境負荷といった身近な問題に目を向けてくれるかもしれないし、冒頭にもある通り、その積み重ねが明日の暮らしを持続可能なものに変えるかもしれません。だからこそ、「遠い場所の誰かが飲んだコーヒーの出酒らし」ではなく、「身近な場所で、自分が飲んだかもしれないコーヒーの出涸らし」であるというトレーサビリティが重要なのです。

▲原料に「もみ殻」を使ったご飯茶碗。米から出た廃棄物を使った器が、また米と交わる新しいリサイクルの形

『食品廃棄物を活かす』

『Re:CAFE』ではコーヒーを巡る循環をテーマにしましたが、同じように素材になりうる食品由来の廃棄物はまだ多く存在します。実際の事例で言えば、『米のもみ殻』や『貝殻』などを再活用してきました。これらの共通点は『日々の業務の中で必然的に生じる廃棄物』であること。前者は『農家レストラン』で、後者は『魚介を主軸とした飲食店』で出たものを使っています。これらのプロジェクトでできた商品は市販することはせず、原材料を提供した店舗のオーダーメイド製品という形で還元しています。
このような『店舗で実際に出た廃棄物』で作った食器を使うことは、お店のブランドストーリーになるだけでなく、SDGSへの社会的なスタンスを示すアイコンにもなります。
また、このモデルケースが広まることは限りある原材料の消費量削減にわずかでも寄与するため、明日の食器供給、ひいては食文化の安定持続にもつながります。一つのアクションだけでは足りずとも、多くの事例が集まれば、それは大きな力になります。
ぜひ、身近な業務の中で何気なく捨てているものがあったら、何かに活かせないか、一度ご相談ください。

<Re:CAFE リ:カフェ

循環型モノづくり『Re:CAFEモデル』の中で生まれたサスティナブルアイテム。

釉薬にコーヒーの出涸らしを配合することで、鉱物資源の消費量の軽減を図りました。出涸らしと言えども鉄分が残っているので、これがわずかに赤茶色の発色に影響して、色彩に奥行き感を与えます。

<Re:CAFE リ:カフェ

こちらは釉薬ではなく、塗料に出涸らしを溶き込んだタイプ。

発色材としてはもちろん、塗面にザラリとしたテクスチャーを与えてくれるので、Re:CAFEモデルのストーリーを伝える上で、説得力や厚みを生み出すことに寄与しています。